冬の避難所は床から冷える高齢の親を守る寒さ対策【段ボールベッドは遠慮しない】
冬に大きな地震が起きて、親が体育館の避難所で過ごすことになったら。いちばんつらいのは、床から上がってくる冷えじゃ。 令和6年の能登半島地震は元日に起きた。国の報告書によると、警察が調べた亡くなった方のうち、寒さが影響した「低体温症・凍死」が1割強あった。 避難のあとに体調をくずして亡くなる災害関連死は220名。年齢が分かっている方の8割超が80代以上じゃった。 寒い避難所は、高齢の親にとって本当にきびしい場所なんじゃ。 この記事では、国のガイドラインをもとに、冬の避難所で親の体を冷やさないためにできることを順番に書いていくぞ。
図解: 冬の避難所 3つの約束
冬の避難所で守ることを1枚にまとめた。印刷して、親の持ち出し袋に入れておくとよい。電話で読み上げて、一緒に確かめるのもおすすめじゃ。
結論:床から離れる・首と足を温める・水を飲んで動く
先に答えじゃ。冬の避難所で覚えておいてほしいのは、この3つじゃ。
冷たい床にじかに寝ない。段ボールベッドやマットがあれば、遠慮せずに使う
帽子とマフラーで頭と首を包む。足もとは厚手の靴下で冷やさない
寒くても水分をとる。ときどき立ち上がって、足を動かす
どれも、特別な道具はいらん。知っているかどうかで、体の守り方がずいぶん変わるんじゃ。
なぜ冬の避難所は高齢者にきびしいのか
理由は大きく3つある。
広い体育館は暖まりにくい
避難所になることが多い学校の体育館は、天井が高くて広い。能登半島地震の報告書にも、石油ストーブでは大きな空間を暖めるのがむずかしいと書いてある。国はストーブやカイロを送ったが、真冬の災害にそなえた暖房の備えはまだ課題とされておる。
床に寝ると体に負担がかかる
内閣府の指針によると、床に長く横たわっていると、エコノミークラス症候群を起こすおそれがある。ほこりを吸いこむ心配もある。だから、ベッドを置くのが望ましいとされておる。
厚生労働省のガイドラインも、床に直接座らず、マットや畳を敷いた上に座ることを、寒さ対策のひとつに挙げておる。
高齢の人ほど、避難のあとに体調をくずしやすい
能登半島地震の災害関連死で、亡くなった経緯が分かっている105名の死因を見ると、心臓や血管の病気が35名、呼吸器の病気が29名。この2つで全体の約6割じゃ。報告書は、これまでの災害にくらべて高齢者の割合が高いとも書いておる。
「わしは寒さに強いから大丈夫」と言う親ほど、気をつけてほしい。寒さは、気づかんうちに体の力を奪うもんじゃ。
段ボールベッドは遠慮せずに使う
令和6年12月に改定された内閣府の指針は、避難所を開くときから、パーティションや段ボールベッドなどの簡易ベッドを置くよう自治体に求めておる。
足りないときは高齢者が先
同じ指針には、全員に行きわたらないときは、あらかじめ決めておいた人に先に渡すとある。たとえとして挙がっているのは、高齢者、障害者、女性などじゃ。親が高齢なら、遠慮しないで使ってよいんじゃよ。
能登では使われないこともあった
能登半島地震では、約7,000個の段ボールベッドが被災地に送られた。ところが、避難所がこみあっていて置く場所がなかった。被災した人が使うのを断ったこともあったそうじゃ。
報告書は、避難所では簡易ベッドを使うのを標準にすべきとまとめておる。段ボールベッドを使うのが体を守ることにつながる、と広く知ってもらうことも大事だとしておる。
親には、「段ボールベッドはぜいたくではなく、体を守る道具じゃ」と前もって伝えておいてくれ。ベッドがまだ届かないときは、マットや毛布を重ねて敷いて、床から少しでも離れる。
避難所に着いたら最初にすること
避難所に着いたら、落ち着く前に3つだけやっておくと、そのあとの夜がずいぶん楽になる。
ベッドがなければ、まずマットや毛布、段ボールを床にしく。座るのも寝るのもその上じゃ
夜は暗くて寒い。明るいうちに道順を歩いておく。懐中電灯はまくら元に
内閣府の指針は、避難所で問診や検温をして健康状態を確かめるよう求めておる。そのとき、持病と飲んでいる薬をはっきり伝える
内閣府の指針には、ひとりあたり最低3.5平方メートルの居住スペースを目指すこと、とも書いてある。こみあっていても、通路をふさがない場所に落ち着くようにしてくれ。
冬の避難に足しておく物
避難所に毛布はあっても、数が足りるとは限らん。冬は、持ち出し品に防寒の物を足しておく。気象庁の資料に挙がっているのは、次のような物じゃ。
- 毛布、防寒シート
- 帽子、手袋
- 防寒着、厚手の衣類
- 防寒靴、上履き
- カイロ
避難所は土足禁止
内閣府の指針は、感染症を防ぐために避難所は土足厳禁にするよう求めておる。厚生労働省のガイドラインも、布団を敷くところと通路を分けるよう書いておる。靴をぬいだ足もとは冷える。厚手の靴下や上履きがあると、ずいぶん楽になるぞ。
眼鏡と補聴器も忘れずに
厚生労働省のガイドラインは、高齢者と話すときに眼鏡や補聴器を付けているか確かめるよう書いておる。見えない、聞こえないでは、配られる物の知らせも分からん。予備の眼鏡や補聴器の電池も、袋に入れておいてくれ。
薬は少し多めに
寒い時期は、道が雪や氷で通れず、すぐに病院や薬局へ行けないこともある。内閣府の降雪対応の手引きも、持病の処方薬を切らさないよう、少し早め(多め)に持つよう呼びかけておる。持ち出し袋には、お薬手帳の写しも入れておくと安心じゃ。高齢の親ならではの持ち出し品は、補聴器・老眼鏡・持病の薬——普通のリストに載らないシニア特有の持ち出し品にまとめておる。
持ち出し袋そのものの中身は、非常持ち出し袋リスト|高齢者が本当に持ち出せる中身を厳選に書いた。冬だけ、帽子と厚手の靴下を足せばよい。
水とトイレをがまんしない
寒いと、のどがかわきにくい。それに、トイレが寒かったり遠かったりすると、行く回数を減らそうとして水をひかえる人が多い。
厚生労働省のガイドラインによると、高齢者は若い人よりのどのかわきを感じにくい。薬の影響で脱水になりやすい人もおる。ガイドラインには、食事のほかに1リットルは水分をとる必要があると書いてある。
ガイドラインが挙げる脱水のサインは、目が落ちくぼむ、口や皮膚がかさかさになる、ぼんやりしている、などじゃ。電話や面会のときに、ようすを見てあげてくれ。
脱水は、尿路の感染症や心筋梗塞、エコノミークラス症候群などの原因にもなるそうじゃ。寒い時期こそ、温かい飲み物を少しずつ飲んでもらってくれ。
トイレに行きやすくしておく
同じガイドラインは、和式トイレが使いにくいために、水を飲むのをひかえてしまうことにも注意をうながしておる。足腰が弱い親なら、トイレに近い場所で過ごせないか、運営の人に相談してみるのもよい。
トイレの備えは、携帯トイレは何回分いる?1人1日5回・7日分の数え方にくわしく書いた。自分のトイレがあれば、水をがまんせずにすむんじゃ。
じっとしすぎない
寒いと、毛布にくるまって動かなくなりがちじゃ。じゃが、動かないことにも危険がある。
エコノミークラス症候群
厚生労働省のガイドラインによると、水分を十分にとらずにせまい場所で足を動かさずにいると、血のかたまりができやすくなる。それが肺などの血管につまるのが、エコノミークラス症候群じゃ。
ガイドラインは、定期的に体を動かし、十分に水分をとるよう呼びかけておる。ゆったりした服を着ることや、禁煙も大事だそうじゃ。アルコールやコーヒーは、飲んだ以上に水分が出てしまうから、ひかえるよう書いてある。
胸の痛み、または片方の足の痛み・赤み・むくみが出たら、早めに救護所や医療機関へ行ってくれ。
動けなくなる「生活不活発病」
避難所では体を動かす機会が減る。厚生労働省のガイドラインは、高齢者は筋力が落ちたり、関節がかたくなったりして、だんだん動けなくなることがあると書いておる。
身のまわりのことは、できるだけ自分でやってもらう。ガイドラインにもそう書いてある。寒い日でも、昼間に少し歩く、座ったまま足首を回す。それだけでもちがうぞ。
冬は風邪やインフルエンザにも用心
気象庁の資料によると、冬は低い温度と乾いた空気を好むウイルスにとって過ごしやすい季節じゃ。避難所には人が集まるから、感染症が広がるおそれがある。
能登半島地震の災害関連死でも、呼吸器の病気は2番目に多かった。寒さで弱った体に、風邪やインフルエンザが重なると、高齢の親にはこたえる。気象庁の資料が持ち物に挙げておるのは、次のような物じゃ。
- マスク
- アルコール消毒液、ハンドソープ、ウェットティッシュ
- 体温計
- ビニール袋(ゴミ袋)
内閣府の指針も、避難所ではこまめな換気と、暖房を使うときの乾燥対策を考えるよう書いておる。寒くても、窓を開ける時間には上着をはおって待ってくれ。
暖房のまわりにも気をつけたい。気象庁の資料は、暖房器具のそばに燃えやすい物を置かないよう呼びかけておる。ストーブの近くで毛布や洗濯物を干すのはやめておこう。
低体温症のサインを知っておく
厚生労働省のガイドラインによると、低体温症はお年寄りや子どもがなりやすい。手足が冷たくなって、ふるえてくる。
- ふるえが始まったら、床に敷物をしく
- 風をよける
- ぬれた物はぬいで、毛布にくるまる
- 顔・首・頭から熱が逃げやすいので、帽子やマフラーで温める
ふるえがなくても、低体温症になることがある。話のつじつまが合わない、ふらつく、意識がもうろうとしている。こんなときは、急いで医療機関へじゃ。家の中での寒さの守り方は、冬の停電で暖房が止まったら?にまとめておる。
「じっとしとれば治る」はまちがいじゃ。ふるえが止まったのに温まっていないときこそ、あぶないんじゃよ。
避難所だけが答えではない
内閣府の指針には、家の被害が小さく、電気や水道が止まっていない人には家にとどまってもらうことも考えるよう書いてある。寒い体育館より、無事な自宅のほうが体を守れることもあるんじゃ。
一方で、ふつうの避難所で過ごすのがむずかしい人のためには、指定福祉避難所がある。内閣府の指針では、高齢者や障害のある人など、特別な配慮が必要な人のための避難所とされておる。
親に持病がある、介護が必要という家は、親の住む市町村の福祉避難所がどこにあるか、どんな人が入れるのかを、ホームページなどで一度見ておいてくれ。親戚の家や、ホテル・旅館に移るという道もある。
親が「避難所には行きたくない」と言うときは、高齢の親が避難を嫌がる理由と、けんかにならない伝え方も読んでみてほしい。
離れて暮らす親に電話で聞くこと
離れて暮らす親の家には、すぐに行けんこともある。冬に入る前に、電話で聞いておきたいことをまとめた。
- 近くの避難所はどこか。歩いて行けるか
- 持ち出し袋に帽子・手袋・厚手の靴下はあるか
- 予備の眼鏡や補聴器の電池はあるか
- 薬はどのくらい持っているか。お薬手帳の写しはあるか
- 段ボールベッドがあったら使うか。遠慮しなくてよいと伝える
- 家が無事なら、どこで過ごすか。親戚の家なども考えておく
どこで過ごすかは、家族で前もって決めておくことじゃ。連絡のしかたは、離れて暮らす親との安否確認、家族で決める3つのルールにまとめておるぞ。
間違えやすい3つ
広い体育館は暖まりにくい。能登半島地震の報告書でも、暖房の備えは課題とされておる
内閣府の指針では、足りないときは高齢者などに先に渡すことになっておる
高齢者はのどのかわきを感じにくい。食事のほかに1リットルは水分をとる
やらなくていいこと・やってはいけないこと
がんばりすぎなくてよい。やらなくていいことと、やってはいけないことを書いておく。
まずは家にある帽子、手袋、厚手の靴下を袋に入れれば十分じゃ
寒い、トイレに行きにくい、と運営の人に伝えてよい。がまんが体をこわす
厚生労働省のガイドラインは、車の中や屋内など換気の悪い場所で、燃料を燃やす器具を使わないよう書いておる。一酸化炭素は色もにおいもない
寒さをしのごうとして車で過ごす人もおるが、せまい座席で足を動かさないと、エコノミークラス症候群のおそれもある。車で過ごすときは、こまめに外に出て歩いてくれ。
避難所で「寒い」と言うのは、わがままではない。言ってくれれば、まわりも助けやすいんじゃ。
今日できる3つのこと
最後に、今日すぐできることを3つだけ。どれも10分で終わるぞ。
親と自分の持ち出し袋に、帽子、手袋、厚手の靴下を入れる
親の家から近い避難所を、自治体のホームページやハザードマップで確かめる
「段ボールベッドがあったら、遠慮せんで使ってな」と親に伝える
よくある質問
Q. 冬の避難所で、高齢の親がいちばん気をつけることは?
A. 床からの冷えじゃ。段ボールベッドやマットがあれば遠慮せずに使い、なければ毛布を重ねて敷いてくれ。帽子とマフラーで頭と首を、厚手の靴下で足もとを温めることも大事じゃ。
Q. 段ボールベッドは、高齢者が優先して使える?
A. 内閣府の指針では、全員に行きわたらないときは、あらかじめ決めた人に先に渡すことになっておる。高齢者、障害者、女性などがたとえとして挙がっておるから、遠慮せずに使ってよい。
Q. 冬の避難に、何を足しておけばいい?
A. 気象庁の資料には、毛布、帽子、手袋、防寒着、防寒靴、防寒シート、カイロ、厚手の衣類、上履きなどが挙がっておる。避難所は土足禁止だから、厚手の靴下や上履きがあると足もとが冷えにくいぞ。
Q. 避難所で水をひかえてもいい?
A. ひかえてはいかん。厚生労働省のガイドラインによると、高齢者はのどのかわきを感じにくく、食事のほかに1リットルは水分が要る。脱水はエコノミークラス症候群などの原因にもなるそうじゃ。
出典
- 内閣府「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(平成25年8月策定、令和6年12月改定)
- 内閣府「避難所の生活環境対策の強化について」(令和6年12月)
- 令和6年能登半島地震に係る検証チーム「令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について(報告書)」(令和6年11月)
- 厚生労働省「避難所生活を過ごされる方々の健康管理に関するガイドライン」(平成23年6月)
- 気象庁大阪管区気象台「地震一口メモ No.234 備えよう、冬の地震」(2024年11月)
- 内閣府(防災担当)「市町村のための降雪対応の手引き<予防編>」(令和7年11月改訂)
本記事は2026年10月時点の情報にもとづいています。避難所の設備や運営は自治体や避難所ごとに異なります。体調に異変があるときは、迷わず救護所や医療機関に相談してください。避難の判断はお住まいの自治体が発表する避難情報に従ってください。